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「たーいむ」
そこでピートが時間凍結魔法を唱えた。
「僕たちパーティーは最初から六人として……さっきまでいた狸王はどこに行ったんだろ?」
「そういえば……」
私たちはきょろきょろと周囲を見回す。狸王が座っていたはずの玉座は、今はもぬけの空だ。
「ピート。パーティーの誰かに狸王が化けてるってこと?」
「うん、レイナ。狸王が戦闘中にいなくなるなんて、何かがおかしい」
「そこに気づくとはさすがピートだわ。ウォルフも少し知恵を使いなさい」
「いや俺さっきからそこを指摘してるんですが」
「特に、こんな狸のお嬢さんがおへそ出して戦っていたら気づくはずなんだけど……どの戦闘でも記憶にないのはなぜだろう」
今度は疑惑の視線が、ポン子に注がれた。
「ポ……ポン子は最初からいたポン!」
ポン子が青ざめながら叫ぶ。
「レディーのおへそをじろじろ見ないポン! このおへそは、その……いわゆる『絶対領域』ポン!」
「絶対領域かあ! 納得なーるへそ!」
ピートと私が、ぽんと手を打った。
ウォルフがあんぐりと口を開ける。
「絶対領域って……何スか?」
「ウォルフ、日本ではメスタヌキが出したおへそを絶対領域と呼んでオタクのみなさんが崇めるの。滋賀県に伝わる信楽焼き狸の原点、日本最初のチラ出し萌え萌え文化よ」
「レイナの異世界日本の話は本当に深くて、大陸に文化の新風を吹き込んでいるなあ」
「その風、俺らの大陸に必要? あと信楽焼って萌え文化の元祖なの?」
「もちのロン。特に金髪ツインテのツンデレタヌキの絶対領域は破壊力が高いわ」
「おい、ポン子に急に金髪が生えたぞ! タヌキが金髪ツインテって、信楽焼とやらを冒涜してませんか?」
「上着と肌の比率が7:3、おへその上下が1:1。これは絶対に譲れない黄金比ね」
「その絶対領域とやらですが……何の役に立つんで?」
「役に立つ? ポン子のおへそはかわいい、カワイイは正義。ただそれだけよ。ウォルフもポン子がカワイイって思うでしょ?」
「カワイイかって言われればカワイイが……それと狸王退治は話が別だろ!」
「あ、あたしがカワイイ? その、うれしいけど(ぽっ)……べ、別にウォルフが好きってわけじゃないんだからね!」
「ポン子のキャラと口調が変わってませんか?」
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