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「せかんどたーいむ」
今度はタヌきちが時間凍結呪文をかけた。物理戦闘が一定時間不能になる呪文で、ウォルフとひそひそ話を始める。
「あのさあ狼王……俺様の幻術はザシキ・ワラーシって言って『増えたのわかるけど誰が増えたかわかんない』ってタイプの化け魔法タヌ。なんでお前らメンバー増えたのあっさり受け入れてるタヌの?」
「さあ……ピートとアリスはともかく、なんか聖女が異常に幻術にかかりやすい体質らしいな」
「高等生物でタヌキを信じる力が強くないと、ここまで幻術にかからないタヌ。あと、いつまでこの絶望的な会話続けるタヌの? 俺様みたいな田舎者には、狸葉原みたいな萌え電気街の話題に合わせるのは疲れるタヌ」
「まあ、このまま俺がお前を斬ってもいいのだが……この調子だとレイナ嬢が全力で止めにかかるから、俺が先に浄化されちまうよ」
「俺様としてはそろそろお引き取りを願いたいタヌ……」
「じゃあさ、少しヒント出せよ。それで俺たちが悩んでいる間に日が暮れて時間切れ。宿屋に戻って出直すってのはどう?」
「しかたないタヌ……」
そこでタイムの呪文が切れた。タヌきちが何かを思いついたらしく、ぽんとお腹をたたく。
「タヌきち、思い出したタヌ~。狸王は仲間に化けるのが得意で、しかも増えてるのに気づかせない幻術が得意タヌ~」
「さすがはタヌきちね。狸王退治の仲間に加えて正解だったわ。ウォルフも仲間ならもう少し役に立ってよね」
「いまタヌきち説得したの俺なんですが」
「つまり僕らは幻術を見ているだけでなく、記憶の人数まで操作されているの?」
「それは厄介だわ。座敷童みたいな術で、しかも相手に気づかせないなんて」
「それ! そのザシキ・ワラーシでビンゴタヌ!」
私は腕を組んで、うれしそうなタヌきちを見る。
「人数の記憶は当てにならない……つまりこの六人の誰かが狸王という前提で推理を進めればいいのね?」
「その通りタヌ!」
「わかったわ。消去法で行きましょう」
全員が、息を呑んで私の推理に期待の視線を集める。
「まずタヌきちとポン子は、狸王候補から外せるわ」
ウォルフが盛大に、ずっこけた。
「なんで??? その前提から議論し直すべきでは?」
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