週末異世界Ⅱ ~聖女様と幻影の城

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「いやいやいや、ちょと待て! 俺はレイナ嬢以上に力がある戦士で、魔法もちょっとは使える。みんなの役に立っていただろ?」 「魔法戦士なら、キャラが私と丸かぶりじゃない」 「聖女と狼ってキャラかぶるの?」 「しかも聖女ほどキャラ立ってないし。そこが怪しい」 「キャラ立つ立たないって問題???」 「確かにウォルフはいなくてもここまで来られた気がするなあ」 「アリスも別にウォルフにーちゃんいらない気がするー」 「じゃあこのタヌキ二匹は何の役に立ったんだよ!」 「タヌきちは旅の途中でお饅頭食べてのどを詰まらせる和ませ系。ポン子は入浴シーンの期待で視聴者を引き留める美魔女系ね」 「また新しい言葉が出た! 美魔女系って何? それ狼戦士より大事?」 「私もよく知らないけど、昭和の日本でチート最強主人公が諸国漫遊して悪人退治する時代劇があって、必須の二大キャラだったらしいわ。これが日本でパーティー参加の旅型魔王退治RPGが生まれた源流と言われていて、日本の異世界作品に大きな影響を与えたの」 「やっぱりレイナの話は大陸文化に新風を吹き込むなあ」うんうん 「その歴史的文化考察、本当に正しいのかよく検証しようよ!」 「純真で物分かりのいいアリスなら俺がわかるよな? ウォルフにーちゃんて呼んで、俺になついていただろう?」 「こんなおじさん知らなーい。だれこの獣男なんかくさーい」 「何でそんなに物分かり悪いの???」 「と、いうわけで。裏切り者の狸の幻影はウォルフ決定ね」  私はにっこり笑って、聖剣を抜いた。 「ちょ……待て待てレイナ嬢。お前らの記憶だと俺たちは旅の最初から六人だろ? 俺がいなくなったら五人になるじゃねえか」 「何言ってるのウォルフ? 私たち最初から五人よ」 「都合よく人数が増減していませんかあ???」 「あなたとの旅は楽しかったけど、ここが潮時ね。覚悟しなさい」 「あれ? 旅を一緒にしたってわかってませんか聖女様???」  ウォルフは思わず後ずさりしたが、タヌきちのお腹にぶつかって二人ともよろめいた。その隙を逃さず、私は「スピード」の呪文を唱えて聖剣を振りかぶる。 「おとなしく私に斬られなさいっ」 「ひいいいっ!」  ウォルフが恐怖で頭を縮めた。その背後にいたタヌきちめがけ、私は青白く輝く剣を振り下ろした。 「ぐわあああ!!!」  剣を正面から受けたタヌきちが、地面を転げまわる。その姿が再び霧に包まれ、仰向けになった巨体の狸王が現れた。 「お、お前、聖女のくせに狸王をだましたタヌ……」 「化けるには化けるで、正々堂々の勝負をするのが聖女の戦い方よ。まともにやりあったら消えて逃げられるからね。今度こそ浄化してくれるわ、ホーリーブレイドぉぉぉっ!」  私が魔力で青白く輝いた剣を横に払うと、狸王がまたしゅうしゅうと煙を立て始め、今度こそ姿を消した。
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