化けても君は君。

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「君の……ライカさんの書く話は本当に好きなんだ」  イベント終了後、会場近くのベンチに二人腰掛ける。金髪チャラ男と黒髪清楚少女、傍から見ればどんな関係に見えているのか。 「でも何でわざわざそんな格好に化けてきてんの? てかそれ、タトゥーシール?」 「いや、本物」  私は指差した格好のまま固まった。頭の中が整理出来ない。 「ピアスも、マグネットとかじゃなくて本物……って、聴いてる?」 「き、聴いてる聴いてるっ。え? じゃあどっちが本物なわけ!?」 「どっちがって……まあ、学校での真面目な格好も本当の俺だし、今の姿も本物って感じかな」 「わ、わけわかめ……」  私は両手で黒髪持つ頭を抱えた。これって、本日の新刊の内容と一緒じゃないの~! 「ライカさんも、今と学校、どっちが本物なの?」 「そりゃギャル……」  ふと口が止まる。ギャルでいる方が多いし、何よりギャルの方がリア友多いし……。でも清楚系でいても気持ちは楽だ。どっちでいても私は私…… 「でも、ギャルがコミケとか文学フリマに参加するなんてな~。あまつさえほんまで作って」 「い、言わないで! ギャル友無くしたくないし! あ、でもオタ友も無くしたくないから、SNSでも黙ってて! ……くれませんか?」  ぺこぺこ頭を下げ、最終的に拝みながら上目でガリ勉くんを見る。彼の表情は緩んでた。 「言うわけないし。さっきも言ったじゃん。俺、ライカさんの書くお話好きなんですから」  あ、ガリ勉くんの微笑、初めて見た。何か可愛い。  そんな私の発見をよそに、ガリ勉くんは髑髏モチーフのシルバーリング輝く左手人差し指を自らの口元に持っていくと、「しーっ」と歯を見せた。 「じゃあ、俺の正体も秘密にしといて下さいね」  見た目はチャラいのに、発する言葉はいつものガリ勉くんで。  そのギャップに、何故か胸の奥が揺らめく気配がした。    化けた私とガリ勉くん、今度の新刊のネタにしてみようかな。
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