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ひとしきり笑いあうと、トーマスは主人のマントを貸してくれとジェスチャーで求めた。トーマスは受け取ったマントで少女をくるみ、軽々と抱き上げた。少女の細い首にかかっているネックレスがプランと垂れた。
「先に行っていてくれ。この子を客間ではなく、2階の空いている中で一番大きい部屋に」辺境伯はトーマスに声をかけ、馬の側に歩み寄った。
「ありがとう、パシフィカス。お前のおかげで、助かったよ。すまないがね、今日ばかりは自分で厩舎に行ってもらえるかい? 水と寝わらはトーマスがきれいにしてくれているし、新鮮な飼い葉も餌箱に入れてあるから。あとでトーマスに厩舎に行かせるよ」
辺境伯は馬具を外すと、首筋を撫でた。美しい白馬は二、三度、首をすり寄せると、わかっていますよ、というように自ら厩舎に向かってゆったりと歩いて行った。
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