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2 デビュタント
辺境伯が少女を拾ってから、約3年後、猫耳の少女コティ・シルキー=フォールドは、デビュタントの席でため息をついていた。まん丸のグリーンの瞳が不安そうに揺れている。
――早く帰りたいよぉ……
コティが拾われたときの年齢ははっきりしなかったが、レディとして社交界デビューをするため、コティは16歳として宮廷で行われるデビュタントに出席しているのだった。
すべてのウィルディシア国民が憧れているデビュタントの会場の中で、「早く帰りたい」と思っているのは、出席者だけでなくその付き添いの家族、さらには給仕、料理人すべてのスタッフを含めても、おそらくコティだけだろう。
吹き抜けの天井はうんと高く、いくつもの大きなシャンデリアがキラキラと虹色の光をあふれさせている。赤いじゅうたんはふかふか。白と金に統一された壁や太い柱は社交界にふさわしい華やかさがあるが、同時に王宮にふさわしい威厳を感じさせる。
実際、宮廷のデビュタントに出席できるのは、貴族の中でも家柄の特に良い家の娘達だけ。厳格さに裏打ちされた華やかさなのだ。
だからこそ、宮廷のデビュタントに「招かれる」かどうか微妙なボーダーライン上の貴族たちが、あの手この手で策略をめぐらせるくらいのことは、もはや通常の手続きと言ってもいいほどだ。
首尾よく、娘を王宮のデビュタントに送り込むことが出来た父親たちは、いつもよりも少し胸を張り、いつもよりも大分声が大きくなっている。
コティは眉根をよせた。
――ここはうるさすぎるんだもん。ドレスは苦しいし靴は痛いし
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