72人が本棚に入れています
本棚に追加
コティは何度も自分に言い聞かせた。その間、メアリはコティの肩をやさしくさすっていてくれた。
「もう、大丈夫にゃ……」
「コティ、顔色が真っ青よ。帰った方がよくなくて? また別の機会があるわよ。とても大丈夫には見えないわ。無理しなくても」
「ダメ! 指輪をバッグに入れた犯人を見つけて、刺青の男をつかまえないとルカさまが危ないにゃ」
コティはメアリの腕をつかんだまま、腰を折ってコティがゼイゼイと荒い息をついた。気分が悪いのに無理やり声を出したせいで、苦しくなったのだ。
「わ、分かったわ、コティ。だからお願い、落ち着いて。あなたが倒れてしまいそう」
メアリがコティの耳元で心配そうにささやく。
イヴリンがバッグから小瓶に入ったイチゴジュースを取り出して飲ませてくれる。口に含むと、甘酸っぱいイチゴの味が口に広がった。
「おいしい……」
気分が落ち着いてくると、テントの中の臭いからは嫌悪感だけではなく、ママや兄妹たちのぬくもりも思い出されて、奇妙な懐かしさに胸がきゅうっと締め付けられた。
――複雑な気持ちにゃ……
「もうだいじょうぶ」
「よかった! さ、ひとまず席に着きましょう。近くの席にナタリアの取り巻きの皆さんがいるはずよ。落ち着いたらご挨拶して手をチェックしに行きましょう」
「うん。ありがとう、メアリ」
最初のコメントを投稿しよう!