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コティはぶら下がっているカーテンをそっとすり抜けた。誰もいないようだ。コティの瞳孔がさらに開き、黒目が大きくなる。同時に暗闇の室内の様子がはっきりと見えてくる。
「どこ? ナタリア、どこにゃ?」
土の床には何かを引きずった跡。コティはミミズの這ったような跡を追いかける。ナタリアを引きずったなんてとても許せないが、おかげでナタリアの痕跡を追える。
ハンガーラックに吊り下がっている衣装をかき分けていくと、上品なローヒールに白いストッキングを履いた足がちらりと見えた。
「ナタリア!」
コティは小さく叫んで駆け寄った。ナタリアはハンガーラックの下に無造作におかれている猛獣用の檻の中に放置されていた。
檻の大きさはナタリアが足を曲げてちょうど収まる程度だが、高さは手を床について四つん這いにならないと入れない。コティが鉄の柵で出来た扉に手をかけると、意外なことに鍵はかかっておらず、ギイッと音をたてて開いた。
「ナタリアっ!」
ナタリアはお茶会の時にコティと交換した黄色いアフタヌーンドレスを着ていた。
「なぜわざわざわたしのドレスを……?」
コティは混乱する頭で、ナタリアを見つめた。
「わたしが狙われていると知っていて……。もしかして、だからなの? 犯人の目を自分に向けようとしたのね? ねえ、ナタリ……」
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