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「だって、ナタリアはこの子のドレスを着ていたんですもの。
おびき寄せた場所は薄暗かったし。
でもわたしのおかげで、こうしてこの子を連れて来られたんじゃない。感謝してよね」
ルビーがつんけん言い返している。もはやおとなしい令嬢という印象はまったくない。
コティは目をつむったまま、くんくん臭いを嗅いだ。たしかに用具入れよりも、動物の臭いが鮮明だ。動物たちの鳴き声もする。
――わかった! ここはきっと、動物たち用のテントだね
コティは細く目を開けてみた。檻の中に入れられている。動物たちと同じように。
――わたし、つかまっちゃったんだ。ルカ王子を暗殺しようとした首謀者を見つけようと思っていたのに、逆になっちゃった
コティは意識を取り戻したことがバレないように目を閉じて、めまぐるしく考えをめぐらせた。
――わたしのバッグに指輪を入れたのはルビーさまだった。誰かに命令されたのではなく「あの方」とやらのためにやったと言っていたけど……。ルビーは団長に敬意をはらっているような口調じゃない。ルビー嬢が「あの方」と呼んでいる人物は誰?
「長居は無用だね。その娘をさっさと始末しちゃおうよ。まったく面倒だなぁ。お前がさっさとルカを暗殺していれば、こんな余計な仕事はせずとも済んだのにさ」
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