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「デビュタントにうまいこと忍び込ませた団員がしくじったのは、そこに転がっている娘のせいでさ。
万事休すかと思いやしたが、自害してくれたんで助かりましたが大損でさ。
その後、だんなにも一芝居打ってもらって、馬に細工してルカ王子が落馬した時は、今度こそと思ったんですがね。
足をちょっとくじいただけで済んだとは、さすが王子さんは悪運が強いですな」
――馬に細工? やっぱり、あぶみが切れていたのも猫が飛び出したのも、この人達がやったんだ!
ルカさまの馬の整備をするはずだったロナウド様がいなかったのは、ヴァイスさまの馬具がおかしいと呼び出されたから。一芝居うって、ということは、それも嘘だったの?
「関心している場合じゃないでしょ? ルカ王子がいる限り、ヴァイスさまに王の座が回ってくることはないのよ」
ルビーが苛立ちを隠そうともせずに言う。コティは思いがけない名前に驚き、気を失っているふりをしていることを忘れて目を開けて目の前の人物を確認すると、小さく叫んでしまった。
「ヴァイスさま?! でもなぜ? ルカ様を慕っているんじゃなかったの?」
「チッ、聞かれちゃったじゃないか。コイツには知られすぎちゃったな。まあ、どうせ殺しちゃうんだからいいか。早く始末しちゃって」
ヴァイスはカツカツと靴音を立ててコティに近づくと、ガンっと檻を蹴った。コティがビクッとすると、あははと無邪気に笑った。
「そのことなんですがね、旦那。この娘、ちょっと変わってまして」
「変わってる?」
「ほら、頭をみてくだせえ」
コティはハッとした。
――もしかして、猫耳を隠していたリボンが取れてしまったのかも
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