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 コティの喉から悲鳴がもれる。コティは檻の柵をすがるようにつかんだが、金属の容赦のない冷たさに手のひらから全身にゾクゾクッと悪寒が走った。足がブルブル震えて、不安で泣きたくなる。 「こいつ、鼻が効くんだよ。デビュタントで失敗したのは、こいつが毒の臭いを嗅ぎつけたせいじゃないか。 もしもバニラの蜘蛛の臭いに気がついていたら、王の病気の原因もバレるかもしれない。 だから指輪を使って排除しようとしたのに、馬鹿なナタリアのせいで失敗したんだ。思い出しただけで吐き気がする」 「ひひっ。あっしにこの娘をくだされば、何度も計画の邪魔をした分、死ぬよりもっと苦しめてやりまさぁ」  団長は下卑た笑いを浮かべると、小屋の隅にある小さなかまどに歩み寄った。コティの脳裏に猫だったときの記憶がフラッシュバックする。 ――そうだった。団長は新入りの動物に焼きゴテを押すのが好きだった。 まだ小さな赤ちゃんの動物の首根っこを抑えつけ、真っ赤に焼いたコテをジュウッと押し付けていた。 小さな子の悲鳴が長く長く響き、毛と肉の焼ける嫌な臭いがテントの中に充満するんだわ。 檻の中の動物たちは、そのたびに痛みと恐怖を思い出して身をすくめて押し黙り、不気味な静寂が一晩中続いたものだった……  団長がかまどに火を入れた。焼きゴテを熱するためだけのかまどだ。真っ赤な炎がボウッと上がると、小さな窓に動物用の焼きゴテを手慣れた様子で突っ込んだ。 「ねえ、その焼きゴテは動物用の物でしょ? それでいいの?」ヴァイスが無邪気に尋ねた。 「ああ……、そいつは猫だから、動物と同じ扱いでいいでしょうよ」  焼きゴテをクルクルと回して、まんべんなく焼けるようにしながら、団長は答えた。にやにや笑うピエロの顔が悪魔のように見えた。黒い鉄が徐々に赤く色が変わっていく。 ――怖いよ…… 「ヴァイス様、わたしたちはもう行きましょうよ」
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