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しかしふたりのしあわせを汚すように、蜘蛛の形をした黒い染みが浮かぶと、じわりと滲み広がって欠片を覆っていく。
女神カルパの手のうちの欠片がすっかり黒く染まってしまうと、花が枯れ落ちるようにくしゃくしゃと形を歪め、指をすり抜けて落ちると粉々に砕けた。
「影の正体は異常に強い黒魔術だな……。黒い蜘蛛が人とウィルディシア国の運命を捻じ曲げようとしている。
呪いで歪められた運命は、わたしには変えられない……。やはり」
カルパは欠片を失った手のひらを見つめていたが、すっと顔を上げると、何もない空間から出現した、長剣と見まがうような時計の秒針をくるりと回した。
欠片に映っていた仔猫が、女神カルパの前に突如として現れた。きょとんとした顔で、足を前に投げ出し、宙空にお尻をつけるようにして座っている。
「わたしは女神カルパ。ここは、Lakewood Occult Paranormarul Sanctuary(レイクウッドの神秘的な超常現象の聖域)です。人間に生まれ変わって、そなたの主人であり愛する人間を守りますか?」
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