3 薔薇のティーパーティー

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 コティは自分の口から漏れ出た賞賛の言葉とはうらはらに、胸に何かが詰まったような感じがして息苦しくなった。 コティはテーブルに並んでいるスイーツをうらめしそうに見た。工夫を凝らしたクッキーやスコーン、マフィンなどの焼き菓子の他にも、クリームが乗っているかわいらしいミニケーキもある。 ――こんな気分でなければ、端から端まで、ぜーんぶ食べるのにな  コティがつまらなそうに一人で立っているため、「踊っていただけますか?」と何人もの若者に誘われたが、「ちょっと疲れてしまったので」と全て断った。  疲れたというのは、ダンスを断る口実だったが、実際にもコティは大勢の人がいる場所に疲れてしまった。 出席しているはずの第二王子、ヴァイスも見当たらないし、逆にミストレ公爵はその大きな声でどこにいても分かるほどだが、恐ろしくて近寄りがたい。 コティはアンドレッドの森の館に帰りたくなってしまったが、勝手に帰るわけにはいかない。なんとなく庭園の奥、人がいない方に足を向けた。 軽い気持ちで歩き出したものの、王宮の庭園はコティが思っているよりもずっと広かった。手入れの行き届いた薔薇は美しく咲いて、そのいい香りが空気に溶けている。 ――迷子になっちゃいそう。帰り道が分かるところまでにしなくちゃ  色とりどりで種類も豊富な薔薇が咲きほこる散歩道を歩いて行くと、鮮やかな赤いドレスがチラリと見えた。
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