3 薔薇のティーパーティー

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――きゃーっ! どうしよう。見ていていいのかな? そんなのいけないことよね?  情熱的なキスが幾度も繰り返され、のけぞった令嬢の首筋にも青年のくちびるが這う。 令嬢の細い腰に添えられていた手が、腰から背中をなぞるように上に撫で上げる。 令嬢がはっと息を吸い込み、ドレスからあふれそうに白い胸元がもりあがる。 貴族の筋張った細い手が令嬢の丸いふくらみを捉えると、甘い香りが漂ってきた。体温が上がり、香水がつよく香りを放ったのだ。 ――うにゃーっ! もう見ていられない。早くここから退散しにゃきゃ  コティがスカートをつまんで回れ右しようとしたとき、目の端にチラッと黒い紐のようなものがかすめた。 「なに?」  コティが視線をもどすと、貴族の袖口がドレスにこすれてわずかにまくれ、チラリと黒い蜘蛛の刺青(タトゥー)がのぞくのが見えた。もう少しで手首に蜘蛛の足がぐるりと巻き付くほどの大きさだ。四っつある蜘蛛の目がぎょろりと動いて、コティを見た気がした。 「ひっ……」  コティは小さく悲鳴を上げてしまい、口を手で押さえた。ポウッとしていた頭に、冷たい水を浴びせられたようだった。  令嬢はキスに夢中で、コティの叫び声に気が付かなかったようだが、蜘蛛の刺青の貴族はコティの方をさっと振り返った。
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