3 薔薇のティーパーティー

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 コティはとっさに身を隠すようにして、後ずさりした。二人の息遣いが聞こえない距離まで来ると、コティはドレスを両手で持ち上げてやみくもに庭園を走った。小さな噴水まで来ると、ベンチに倒れ込んではぁはぁと肩で息をついた。 ――ドキドキして、口から心臓が飛び出ちゃいそう! 見られてはいないわよね? すぐに隠れたし。  あのふたり、恋人同士なのかしら? きっと、そうよね。 ううん、そんなことどうでもいいのだわ。 蜘蛛の刺青(タトゥー)、見付けたわ!  本当にいるんだ。顔が見えなかったのは惜しかったけど、わたしの顔を見られる可能性もあったのだから、よしとしにゃきゃ……  コティはしばらく木の下で息を整えると、早く戻らなくちゃ、と思った。 ――蜘蛛の貴族はわたしが見ていたことに気が付いていた。パーティーに戻って、誰かいない人はいないかと探されたら、わたしだって分かってしまうかもしれない。 ――けれど逆に、わたしがいなくなっている貴族は誰かって、調べることができたら? 蜘蛛の貴族が誰か、っていうことがわかるんじゃない?   コティは倒れ込んでいたベンチから顔を上げた。  やっぱり早く戻らなくちゃ、とコティは足を踏み出そうとしてピタリと動きを止めた。  「あれ? 帰り道はどっちだったかな」  逢い引きするふたりから離れることしか考えていなかったので、帰り道がわからなくなってしまった。 「困ったにゃ……」
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