3 薔薇のティーパーティー

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「ありがとうございます。あの、ではわたしはこれで」  コティはその場を逃げ出そうとした。 「待って、コティ! 靴はいらないのか?」  王子がコティの靴を掲げて、ブラブラと振っている。 「あっ、靴! えと、イリマス」  コティは手を靴に伸ばして、そろそろと王子に近寄った。 「ありがとうございます」 「それだけ?」 「えっ?」 「木から落ちて大けがするところだったんだよ。僕は一応、恩人だと思うんだけどな」 「そそそ、そうですよね。ええと、辺境伯の屋敷に戻ったらお礼の品を用意します。何がいいですか?」 「僕は王子だからね、なんでもだいたい持っているんだ」 「え? それじゃあ、どうしたら」 「ダンスを」  王子がコティに両手を差し伸べる。 「ルカ、それはダメだろ!」  ロナウドがコティとルカ王子の間に割り込んできた。 「あっ、なんでロナウドが止めるんだよ」 「メアリさんが心配して待ってる。早く帰ろうぜ!」 「一曲だけ」 「ダメだって。まったく誰が氷の王子だよ」 「うるさい将校殿だな。仕方ない。コティ、ダンスはまた今度ね」  ルカ王子はコティの頭を撫でた。 「あの、帰り道はどっち……ですか? 木の上から確認したんですけど、落ちてくる間に方向が分からなくなっちゃって」 「あははっ!」
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