74人が本棚に入れています
本棚に追加
「ありがとうございます。あの、ではわたしはこれで」
コティはその場を逃げ出そうとした。
「待って、コティ! 靴はいらないのか?」
王子がコティの靴を掲げて、ブラブラと振っている。
「あっ、靴! えと、イリマス」
コティは手を靴に伸ばして、そろそろと王子に近寄った。
「ありがとうございます」
「それだけ?」
「えっ?」
「木から落ちて大けがするところだったんだよ。僕は一応、恩人だと思うんだけどな」
「そそそ、そうですよね。ええと、辺境伯の屋敷に戻ったらお礼の品を用意します。何がいいですか?」
「僕は王子だからね、なんでもだいたい持っているんだ」
「え? それじゃあ、どうしたら」
「ダンスを」
王子がコティに両手を差し伸べる。
「ルカ、それはダメだろ!」
ロナウドがコティとルカ王子の間に割り込んできた。
「あっ、なんでロナウドが止めるんだよ」
「メアリさんが心配して待ってる。早く帰ろうぜ!」
「一曲だけ」
「ダメだって。まったく誰が氷の王子だよ」
「うるさい将校殿だな。仕方ない。コティ、ダンスはまた今度ね」
ルカ王子はコティの頭を撫でた。
「あの、帰り道はどっち……ですか? 木の上から確認したんですけど、落ちてくる間に方向が分からなくなっちゃって」
「あははっ!」
最初のコメントを投稿しよう!