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「あーっと。コティは初めて来たから、知らないんだね。スイートガーデンは正式な名前ではなくて、みんなが呼んでいる通称なんだ。つまりね、ここは貴族たちがパーティーを抜けだして、こっそりデートする場所なんだよ」
「ああ、それで!」
コティは深くうなずいた。蜘蛛の貴族と赤いドレスの令嬢がアバンチュールを楽しんでいたのは、特別なことではなかったのだ。
「スイートガーデンから男と女が一緒にもどったら……ね? わかるだろ?」
「は、はいっ。誤解されちゃうのですね。叔父さまが心配しちゃう。じゃあ、わたしは先に行きますね!」
コティはドレスをひるがえして、走っていった。
ロナウドが走り去るコティの後ろ姿に「ヒュウッ」と口笛を吹いた。
「おい、口笛なんて下品だぞ」
「悪い。あの子、すごく走るのが速いから、驚いたんだ」
「確かに。そもそも走る御令嬢を眺めるのも珍しいことだけどな。さあ、僕たちも戻ろう」
ふたりはコティと一緒だったと思われないようにゆっくり歩き、時間差を付けて会場に戻った。コティがメアリと一緒に談笑しているのを見つけると近づき、「こんにちは、コティさん。踊っていただけますか?」と、スイートガーデンでの出来事などなかったように、王子がコティをダンスに誘った。
「はいっ、もちろん!」
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