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(僕のパパとママは……顔も名前も思い出せないなんて、そんなことってある?)
そしてついに、最悪の考えが頭によぎった。
(もしかして僕、この森に捨てられたのかな)
忘却の魔法を使って、これまでの記憶をきれいに消された後で――
僕は、要らない子だったのかもしれない。
ざざ、と強い風が森を揺らした。突然の音に驚き、トトは頭を抱えて地面に伏せた。
怖い。寂しい。これ以上、どこに向かって歩けばいいのか分からなかった。足が石のように重くて、もう一歩も動けない。
「……ふ、え、ええぇ」
必死にこらえていた涙が、声と一緒にあふれだす。
(どうしよう、このまま日が暮れたら。どうしよう、ずっとひとりぼっちだったら。どうしよう、どうしよう、どうしよう……)
途方に暮れて、わんわん声をあげて泣いた。トトの真っ青な瞳から、ぼろぼろと涙がこぼれる。泣いてもどうにもならないけど、気が済むまで泣いていたい。
(神さま助けて。誰か僕を見つけて。誰でもいいから、早く助けに来て――)
泣きながらできることと言えば、神さまに祈ることだけ。
(神さま、困ったときだけ調子よく頼ってごめんなさい。でも他に頼れる人がいないので)
どうか助けてください。お願い神さま。どうか。誰か。
――僕を助けて。
「どうして泣いているの?」
どうせただの幻聴だと思った。
あまりに心細くて、誰かに助けてほしくて、あまりに強くそう願ったから――
「君、どこから来たの? 迷子になっちゃったの?」
(幻聴じゃ、ない――?)
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