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「じゃあねトトちゃん。これからもロンをよろしく頼むよ」
「はい。国王陛下も、どうぞお元気で」
最後の力で、トトはあふれそうになる涙を喉の奥へと押し返した。
「愛してますよ、師匠!」
「うるせェ。テメェも愛しのダーリンにせいぜいおしめを替えてもらえ」
遠ざかるマーリンの姿を見送りながら、トトは唐突に思い出した。
(そう言えば、師匠からお借りした一年分の命をまだお返ししていない!)
慌ててマーリンの命に繋がる光の流れを掴まえ、弱々しい光の筋を大事に胸に抱きしめた。
自分の命の欠片を、抱きしめた光の筋に乗せ、口づけを移すように流し込む。
(師匠、今までありがとうございました。どうぞお幸せに)
明るい命の光が、あるべき場所に戻っていく。
たった一年。でも、かけがえのない一年だ。
その大切な時間を、どうか大切な人と過ごせますように。
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