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「ユーイン、元は俺たちと同じ一般兵だったのに、いったいどうやってベルセフォネ様の側近になったんだ? ただの兵士がそこまで昇格できるなんておかしいと思ったんだ。お前はその身体を売ってエイドリアンに取り入り、お優しいベルセフォネ様の側近になったんだろう?」
兵士の言葉はユーインを――なによりエイドリアンを侮辱するものだった。
自分は娼婦で、エイドリアンは色欲な傲慢男だと言ったからだ。
それが真実ならどんなに喜ばしいだろう。
エイドリアンに欲しいと言われれば悦んでこの身を捧げよう。
けれど彼は自尊心の高い男だ。そんなことを許しはしない。
それ故に、ユーインは彼に恋をした。何処までも不器用で真っ直ぐな彼だからこそ。
エイドリアンは媚びを売って流されるようなそんな人ではない。否定したい。けれど、身体の隅々につけられた赤い痕は誰かに抱かれたことを意味している。
その誰かとは、ユーインが追いかけたその人しか考えられないと兵士たちは思ったようだ。
なにせ自分はエイドリアンの変化した身体の弱みにつけ込み、抱かれた。半分当たっているだけに何も言い返せない。
けれどエイドリアンは違う。
彼は、たとえ身体が渇望し、飢えていたとしても人間の血液を求めなかった。ユーインが進んで肉体を捧げなければ、彼は誰にも手出しせず、ただ飢え死にしただろう。
エイドリアンは何があっても屈しない誇り高い王子だ。
だが、自分のこの身体では肯定する証拠にしかならない。
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