prologue

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 体内に流れていた血液と共に豊かな色彩もことごとく消え去る。  指先さえも動かせない。この感覚はまるで、全身が鉛になったような気分だ。  先ごろまで感じられた吐き気をもよおすほどの血なまぐさい匂いは、時間の経過と共に次第に消滅していく。しかしそれはけっして身体の状態が良くなったからではない。すべては無と化すその時が来たのだと、彼は知っていた。  体内の血管に血液を送り出すために鼓動していた心臓は少しずつだが確実に止まりはじめている。彼の脳裏には、『死』という言葉が過ぎっている。けれども彼には到底受け入れることはできなかった。どうやってもやらなければならないことがあったからだ。  だから彼は確実に自分を包み込もうとしている無という静寂から逃れようと抗い続ける。  混沌よりもさらに深い闇の奥に身体を投じられようとも、それでも『死』を拒絶し、『生』を探した。  無様に倒れる自分を見下ろし、彼女が嘲笑う。  しかし、耳障りな嘲りすらも聞こえない。彼のすぐ足元まで死が迫っている。  やがて深い闇の中に意識が囚われ、そうしてもう二度と自分の使命すらも全うできないと思った彼は悔し涙を浮かべた。  深い闇に身を投じる中でも彼の中にあるのは深い悲しみと憎悪のみ。  彼の使命を全うする事が出来ないことを悔やみ続け、そうして深い闇へと彼は身を投じる。
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