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第5話・恋心。
ユーインは虚ろな世界に身を委ねていた。まるで静かな波の上に浮かんだような感覚は、母なる海に抱かれているようなあたたかさと、そして力強さがあった。
意識のないまま目を閉ざしていると、不意に自分の体内に熱を持った何かが注ぎ込まれるような感覚に襲われた。
その《何か》は体内に張り巡らされている大小様々な血管を所狭しと暴れまわり、発火するような熱をもたらした。
この感覚は口では言い表せないほど、あまりにも狂おしいものだったから、ユーインの意識は瞬く間に覚醒した。
目を開ければ、眩いほどの白昼の太陽から放たれた光が、無造作にもブラインドすら下ろされない窓をくぐり抜けていた。
ユーインは寝台から慌てて起き上がり、転げそうになりながらもブラインドを下ろす。そうしたのは、この家の主であるエイドリアンがヴァンパイアだからだ。
ヴァンパイアは腐敗した死者の肉体を無理矢理この世に蘇らせられた存在で、本来この世にあってはならないもの。
だからすべての活力の源である太陽は彼らを嫌い、焼き殺そうとするのだ。
しかし、エイドリアンは少々違う。彼は冥府の神、死者の魂を監視する王の子だ。彼は常に死と隣り合わせで生きていた。それゆえに、ヴァンパイアとなっても太陽に焼かれて死することはない。
だが、やはりヴァンパイアとしてこの世に蘇ったのはたしかだ。彼の体力は太陽によって多少なりとも奪われてしまう。その結果として、普段よりも魔力のコントロールが難しくなるのだ。
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