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ユーインは、いかなる時であってもエイドリアンには最高のポテンシャルでいてほしいと願っていた。
なんとか降り注ぐ太陽光を阻止できたと胸を撫で下ろしたユーインが次に気になったのは、寝台に横たわっているエイドリアンの様子だ。彼の方へ進んだその時、つま先に何かが当たった。
床へ視線を投げかければ、そこには小さな袋の数々が散乱している。
ユーインは、この部屋がいつの間にこれほどまでに散らかったのかと不思議に思った。
たしか昨夜、悪魔退治に向かった時は部屋はこんなに散らかっていなかった。
だったら散らかったのはいつだろうか。
首をひねり、深い眠りについている彼を眼に入れた。
相変わらず彼はとても美しい。
長い手足と引き締まった肉体美。その身体は堂々と仰向けになって寝台に横たわっている。
象牙色の肌は鋼のようであるがしかし、とても滑らかだ。つり上がった凛々しい眉に、本来なら射抜くような鋭い目は瞼で閉ざされている。
そして流れるような鼻梁の先にある薄い唇。
波打つ漆黒の長い髪は彼の美しい相貌をさらに際立たせている。まさに王子という名に相応しい。
ユーインは細身の自分とはまったく違う男らしい肉体美を見つめ、深いため息をついた。
そこで気がついたのは、自分が無傷だということだ。
昨夜はたしか悪魔退治を命じられ、討伐に向かった。一戦交えた自分は悪魔の攻撃を受け、負傷したのではなかったか。
――そう、自分は太い幹の木々に打ち付けられ、気を失った。
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