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透き通るような白い肌。夜の漆黒を思わせる長く艶やかな髪は彼女の美をさらに際立たせている。
宇宙の星々をも思わせるエイドリアンとは違ったダークブルーの瞳を守るように長い睫毛が覆い、鼻筋の下では魅惑的な真紅の唇が乗っている。
ほっそりとした顎のラインと首筋、そしてしなやかな身体は夜のドレスに包まれる。
ユーインは慌てて涙を拭い、寝台から転げ落ちるようにして下りると深々と頭を下げた。
――ユーインの目の前にいる彼女こそ、冥府の王、ハデス・プルートンの正妻である。
自分が泣いていたところをベルセフォネが知れば、心優しい彼女は心配するに違いない。ユーインは頭を下げ続ける。
「また泣いていたのですか?」
ベルセフォネは慈愛に満ちた声でユーインを宥めた。顔を見なくても悲しみの表情を浮かべながら微笑んでいる姿が想像できる。
ベルセフォネは自分に素直なユーインのことをとても気に入っていた。
当然、ユーインの考えも気持ちも、そして彼が誰に恋をしているのかも彼女はすべて知っていた。
だからこそ、エイドリアンを追うために自分の側近から退きたいという彼の言葉に頷き、下界へと降り立つ許可を出した。
もちろん彼女は恋愛をするのに、男だから女でなければいけないなどという常識は持っていない。
彼女はとても柔軟な考え方をした女王であった。
それにしても――と、ベルセフォネは床に跪いている元側近をあらためて見つめた。
彼が着ているブラウス越しから覗く白い肌は赤い痕が見え隠れしている。華奢な身体は艶めかしさが匂いこぼれ、何より、ルビーのような赤い瞳は光り輝いていた。
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