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「意識下でアルテミスが言ったんだ。俺もその言葉が信じられなくて、さっき魔力を探ったんだが、アルテミスの言うとおりだった。奴らが暴れている」
「そんな……」
ユーインは信じられないと首を振る。
けれど、先ほど現れたベルセフォネの言葉が頭を過ぎった。
『何かが這い上がってくる不穏な空気を感じる』
果たして彼女が感じたものはコレと繋がっているのだろうか。
「ユーイン?」
考え事をしていたユーインはエイドリアンに呼ばれて顔を上げると、エイドリアンの顔がすぐ目の前にあった。
親指の腹でそっと下瞼を撫でられ、ユーインの呼吸が一瞬止まる。それと同時に心臓が大きく跳ねた。
「腫れているな、泣いたのか?」
それはあまりにも優しい触り方だったから――。
訊ねた彼の耳障りの好い低音が胸に響く。
ユーインの顔に熱が灯る。
「顔も赤いな……」
顔が赤い理由がまさか好きな人に触れられているからとは言えず、口ごもった。
「身体はもう大丈夫なのか?」
(貴方が大切な血液を分け与えてくれたから――)
ユーインは息が詰まりそうになりながらもゆっくりと頷いて見せた。
「必ずベネットを見つけてみせる」
そう。
だからこそ、そのためにも――。
「ぼくも行きます」
ユーインは真相を知るため、後ろ髪を引かれる思いで立ち上がる。エイドリアン同様に悪魔退治の身支度に取り掛かった。
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