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試験に行かなかった時に聞いた連絡先。
初めての電話が泣きながら、
『私…もう帰れない…』
そう言って泣き続けるしか無かった。
中山のアパートは少し古く、中は荷物が少ない、おしゃれとは程遠い部屋だった。
部屋の中に入ってきた茜にお茶が出された。
茜がお茶を飲むのを見て、中山は優しく、
「どうしたの…?」
と聞くと、
「親と喧嘩した。もう帰らない」
そう言って茜は黙り込んだ。
「試験を受けなかったから…?」
そう聞く中山の目を見ながら、
「私は大学より、先生と居たい。離れたくない」
と茜が答えると、中山が驚いた顔をした。
「え…?僕のことを話したのかい?…何て…?」
と、戸惑う声で聞かれた茜は、
「40上の先生と同棲したいって…」
と小さな声で答えると、中山は頭を抱えて黙り込んだ。
「先生…、迷惑なの…?」
茜が不安そうに問いかけた。
そんな茜の方を向き、目を合わせながら、
「君を大事にしたいよ。でも、ご両親には僕からちゃんと話さないと。どんなに反対されても。その覚悟はあるよ」
そう言って微笑んで中山は優しく抱きしめた。
「僕がご両親に会うよ。許してくれるまで、会うよ」
自分自身を鼓舞するように、中山は茜に囁いた。
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