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黄色い幸せ卵のふわふわオムライス
「結菜、お誕生日おめでとう!」
「ありがとう……」
久しぶりに両親揃った夕ご飯。
お父さんとお母さんは私の誕生日を忘れていなかった。
ちょっぴり照れくさくて、うつむく。
目の前には、鮮やかな黄色のふわふわ卵のオムライスとかかっているケチャップの赤。
ずっと食べたかった、お母さんのオムライス。
「ケーキもあるぞう!」
お父さんが有名なケーキ店で買ってきたと、ケーキアピールをするけれど、まずは、ご飯。
お父さんは、ちょっぴり寂しそう。
オムライス、サラダ、野菜とベーコンのコンソメスープ。
自分で作るより、ずっと豪華で美味しそう。
「ごちそうだね」
お母さんに言うと、「結菜の好きなご飯でしょ?」と、少しだけ得意げに笑う。
うん、と頷いて私はスプーンをそっと、オムライスの端にいれる。
シュワッとスプーンから伝わる、スフレのような感触。
自分の卵焼きだと固くなって、どうしてもお母さんみたいには焼けない。
口に入れると、ふうわりバターと甘みのあるミルクの優しい甘さ。
チキンライスのケチャップ味もほんのり甘く、微かな胡椒の香り。
私は笑顔と共に大きく頷いた。
うん、これ。
食べたかったお母さんの味。
久しぶりのお母さんのオムライス。
「お母さん、後でオムライスの作り方、教えてね」
お母さんは微笑んで頷いた。
「もちろんよ」
久しぶりに家族で食べたオムライスは、どこのレストランよりも美味しい。そんなにレストランに行ったことないけど。きっとそう。
これからは久しぶりじゃなくて。
きっと毎日、家族で美味しいごはんが食べられそうだなとも思う。
今度は私の作ったご飯を、お母さんにも食べて貰おう。
幸せなオムライスは、これからはきっと我が家に続く、そう思う。
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