お寝坊お父さんと、家族のこと

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お寝坊お父さんと、家族のこと

「お父さん、早く起きて。会社に遅刻しちゃうよ」    残業の多いお父さんは、お寝坊。  毎日起こすだけでも一苦労。 「ほら、早く起きて。今日のお弁当はお父さんの好きな生姜焼き弁当だよ」  言いながら、お父さんの掛け布団を剥いだ。 「うぅん。もう少し寝かせてくれよぅ……」  目をこすりながら、お父さんが起きる。 「朝食もできてるから、早くリビングに来てね」  そう言って私は、階下のリビングに降りる。  野菜のお味噌汁、炊きたてごはんに目玉焼き。ゆかりふりかけ。  朝ご飯は簡単にそんな感じ。  うちはお母さんがいないから、私がお母さん代わり。共働きで忙しい両親に代わって、小学生の頃からご飯は作っていたし、掃除も洗濯もお母さんから教わっていたから、大丈夫、なのだけど。  小学校は給食があったから良かったな。  中学生になったら、毎日お弁当で正直面倒くさい。  でも、自分のを作るついでにお父さんのお弁当も作ったら喜ばれたから、毎日お弁当を作るようになった。たまには購買のたまごサンドが食べたいなって思う。お弁当を持って行くし、もったいないから買わないけどね。    小学生の頃は、家族が別々になるなんて思いもしなかった。  家族はずっと一緒にいるのが当然って思っていたから。  学校に行って、帰ってきたら塾や習い事、それらが無い日はお友だちと遊んだり。お母さんのお手伝いをしたり。そんな毎日がずっと続くと思っていた。  お父さんとお母さんのケンカが増えたのはいつの頃からだったか。  お母さんは仕事で疲れて帰ってきても、必ずご飯を作ってくれたし、お洗濯もしてくれた。  外で仕事をするのがお父さん。  外で仕事をしてきても、家事をするのがお母さん。  それが当たり前だと思っていたけれど、ある日お母さんが爆発した。  家事は一切やらない、というお母さんに私は言った。 「だってご飯を作るのも、お洗濯もお母さんの仕事でしょ」  お母さんは悲しそうに私を見つめた。 「……お母さんの仕事じゃないよ……」 「だって、美晴(みはる)ちゃんちだって、たかしくんちだってお母さんがお洗濯したり、ごはん作ってるよ?」 「人のうちは、人のうち。うちは、うち」  小学生の私には、怒るお母さんの言い分が分からなくて困惑した。  今考えてみると、美晴ちゃんの家も、たかしくんのお家のお母さんも専業主婦だった。  人は人。うちはうち。  お母さんにお世話をしてもらうのが当たり前。  そう思っていたお父さんと私に、お母さんは、Noを突きつけた。  
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