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 幼稚園でも聞かされていたように、多くの友人に囲まれた明るく刺激的な毎日。  勉強も、心配していたほど大変ではない。  クラスには授業中じっと座っていること自体が苦痛だという友人もいたようだが、健は幼稚園でも座学の時間はあったので特に困りはしなかった。  ただ、入学後しばらくの集団下校期間が終わると、学校を一斉に出たとしても曲がり角を経るごとに仲間は少しずつ減って行く。  それが寂しいわけではないが、帰宅後に遊ぼうにもクラスメイトには習い事をしているものも多く時間の都合がつかなかった。  学区はたいして広くないにも拘らず、少子化の影響もあってか健の家のすぐ近くに同学年の子どもはいない。  ご時勢なのか、自宅に他所の子どもを呼ぶのを嫌がる家庭も珍しくなかった。  そのため、健は校外で遊ぶとしたら近所の上級生や未就学児になってしまうのだ。  その場合、遊ぶというより「遊んでもらう」「遊んであげる」形になりがちだった。  そこへ現れた、みゆき。  彼女は自分のことを話さないので、実際に同じ一年生かは不明だ。しかし、健は同級生と何ら変わらず気軽にみゆきと遊ぶことができた。  グループならともかく、女子と二人きりで遊んだことも、遊びたいと思ったこともまったくなかったのに。  初めて顔を合わせた際、「女とふたりになんか」と自ら口にしたことさえ意識にも上らない。  驚くほど自然に打ち解けて夢中で彼女と遊んでいる自分にも、健は気づいていなかった。
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