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第97話 銀狐、目合う 其の二十 ※
──その美しさに、息を呑む。
全身を淡い光に包まれた竜体は、ひとつの穢れのない清らかで至純な白。ひとつひとつの鱗が畝るようにほのかに光り輝いて、まるで唯一無二の宝玉の様だった。
(ああ……こんなに)
こんなに綺麗な竜が自分のものなのか。
自分を想ってこの旅路を追い掛けてきたのか。
白竜はかつて見た幼竜とは、比べ物にならないほど伸びやかに成長していた。まさに成竜となった姿を見て、酷く感慨深い感情が晧の胸の中を占める。
誇らしさと寂しさが同居するその感情のままに晧は、白竜の口吻にそっと触れた。
「……綺麗だ……白霆。──もう、白竜とは……呼べねぇな」
『──っ!』
白霆の息を詰める様子が脳内に伝わる。
『私は……早く成竜になりたかった。貴方に守られるだけの存在ではなくて、貴方を守る存在になりたかった。──ですが……』
きゅうと、か細く鳴く白竜の声に、聞き覚えがあった。彼が幼竜で思念が上手く使えなかった頃、自分に何かを訴えたい時によくこんな声を出していのだ。
「……ん?」
その頃のことを思い出して、晧は白竜の口吻を優しく撫でながら促すように聞く。
気持ち良いのだと言わんばかりに白竜がぐる、と唸ったあと、脳内で再び声が響いてきた。
『ですが……成竜になっても、どんなに人形の身体が大きくなっても……私は永遠に貴方の『白竜』です──晧』
今度は晧が息を詰める。
「──っ、白竜……っ! はくて……い!」
『……はい』
「俺の……白竜……っ!」
『……はい。私は貴方の為に生まれてきた、貴方だけの番です』
「……っ!」
白竜の翠水の眼に真っ直ぐ見つめられて、脳内に響くあまりにも真摯な言葉に、晧は昂る心のまま口吻の先端に口付けた。
やがて白竜の長い舌が口吻から現れて、透明な蜜を滴らせながら晧の唇を這う。その甘さをすでに知ってしまった晧は、自らも求めて舌を差し出した。竜舌の細くなった先端が晧の舌を優しく絡め取る。
「ふっ……んんっ、ん……」
一頻り絡め合ってお互いの舌を舐め合った後、竜舌はゆっくりと晧の口腔内に入り込んだ。先端に上顎の襞を擽られて、くぐもった艶声が洩れる。
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