真夜中のデート

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真夜中のデート

 夏休みになりボクたちは(ひそ)かにデートを重ねた。他の誰かに見られないように真夜中のデートだ。  もちろん人気のデートスポットなど(もっ)ての(ほか)だ。  真夏だというのにマスクで変装し、人気(ひとけ)のない場所ばかりでデートをした。  まるで人気アイドルと極秘デートしている気分だ。それも仕方がない。  なにしろボクたちふたりは教師と教え子という禁断の関係だ。  ボクたちは深夜に近くの海岸へ来ていた。  心地よいさざなみの音が聞こえてくる。 「悪いなァ。こんな真夜中しかデートできなくて」  ボクは苦笑してレイラに謝った。  これが普通のサラリーマンなら休日の昼間にアミューズメントパークにでも行ってデートしても良かったのかもしれない。  教師と教え子が付き合うなど世間的にはタブーだ。 「ううゥン、ジュンと一緒なら良いよ」  レイラはボクに腕を絡めて甘えてきた。  甘美な匂いがボクの鼻孔をくすぐった。 「ゴホン、レイラが卒業するまでは、ボクたちの関係は秘密にしないとなァ」  思わず咳払いをして苦笑した。  秘密にすると言う事を条件に校長先生からも許可を得ていた。 「そうね。学校では、お互い距離を取らないと」 「ああァそうだな。他の生徒たちから『依怙(エコ)贔屓(ひいき)するな』って、クレームがついてもヤバいからな」 「フフゥン、じゃァあと半年以上、隠れて付き合わなきゃならないのね」 「ゴメン。ボクが教師じゃなかったら、すぐにでも結婚して良いんだけど……」 「良いよ」 「それからレイラのお母さんにもちゃんと会って結婚の報告をしないとね」 「えッ、別にあのヒトは関係ないでしょ」  急にふて腐れた態度を見せた。 「そんな事はないよ。レイラの保護者だし」 「ふぅん、あのヒトは母親じゃないのよ」 「えェ……、母親じゃない?」 「そう、女なのよ。いつもイケメンをアクセサリーのようにして。だから私はホストみたいにチャラチャラしたイケメンが大嫌いなの」 「ハッハハッ、キツいなァ。そりゃァボクはイケメンじゃないからねェ」  
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