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「こっちの大学なんだってね」
「そうなの。有香ちゃんが『同窓会あるから来て!』って呼んでくれて。卒業してないのに図々しいかな、って思ったんだけど」
陽奈の少し遠慮がちな口調に、近くにいた女子たちが口々に異論を被せる。
「何言ってんの! 五年生まで一緒だったじゃん、全然関係ない子呼ぶのとは違うでしょー」
「そうだよ~。有香のおかげで陽奈ちゃんに会えてよかったよ。戻って来てるのも知らなかったしぃ」
「そういやあたしと有香以外はみんな知らないんだ」
「奈々子も文通続けてたの?」
「『文通』は中学入った頃までだね~。そのあとはメールと、今はもうメッセージよ」
彼女たちの会話を傍で聞いたところでは、津島 有香と木村 奈々子は陽奈が転校してからもずっと連絡を取り続けていたらしい。
「陽奈ちゃん、メアドかID教えてくれる?」
「あ、わたしも!」
一人が切り出すのに、ブランクがあったらしい周りも便乗している。
「いいよ、あたしも知りたい」
陽奈はすんなり了承して、バッグからスマートフォンを取り出した。
わいわいと連絡先を交換している女性陣。
陽奈が転校するときは、住所を訊くことさえできなかった。ほんの一歩、踏み出す勇気がどうしても出なかったあの頃。
八年も経ったのだ。自分はもう十歳の子どもではない。同じことを繰り返すのは嫌だ。
「三倉さん、俺も、──俺も番号交換してもらえる、かな?」
「もちろん」
情けなくも微かに震える声で頼んだ宏基に、彼女は躊躇なく笑みを浮かべて頷くとスマートフォンを握り替えた。
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