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◇ ◇ ◇
「ねえ、宏基くん。有香の結婚式だけどさあ」
「あ、そうだ。どうなった?」
妻の言葉に宏基は問い返す。
「ベビーベッド用意してくれるって! あとおむつ替えとか休憩のためのスペースも。他にも赤ちゃん連れの人いるみたいだけど、なんか申し訳ないよね。とりあえず、泣いたらすぐ外に連れ出すわ」
「その場合は俺がみっちゃん見てるよ。津島さんは陽奈ちゃんの方が仲いいんだし、中座するなら俺の方がいいだろ」
結婚式と披露宴に招待したいという打診があった際も、娘の美月がまだ一歳にもならないため遠慮するつもりだった。
あるいは陽奈だけが参列する形を提案したのだ。
祝いたい気持ちは当然あるが、それ以上にせっかくの晴れの舞台に迷惑を掛ける可能性は排除したかった。大切な友人だからこそ。
しかし、本人に「どうしても二人で来て欲しい。できる限り赤ちゃんの負担にならないように配慮するから」と懇願されて了承した経緯があった。
二人にとって、津島 有香は文字通りの『キューピッド』だ。
あの同窓会に彼女が陽奈を呼んでくれなければ、今の三人での生活はきっと存在しなかった。
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