7人が本棚に入れています
本棚に追加
「沖さん、私ちょっと疲れちゃった。カフェで休んでていい?」
「あ、ああ。……怜那、すぐ追い掛けるから待ってて」
「うん」
小柄な怜那は、ヒール込みで十センチ以上は背の高い美知の顔を視線でちらりと見上げて軽く会釈する。
「失礼します」
それだけ言い残して、彼女はすぐ先にあるカフェに向かって歩き出した。
「なんか邪魔して悪かったわ。彼女にも気を遣わせちゃって」
美知は申し訳なさそうにしながらも、ちょっと躊躇って口を開く。
「ただ、あの子どう見ても高校生だけど。あなた高校の先生になったんじゃなかった? ……まさか生徒じゃないわよね⁉」
「大学生だよ。失礼だろ」
探るような言葉を、俺はとりあえず否定した。条件反射みたいなもんだ。
実際、正面切って訊いてくれるだけよっぽどいいよ。
確かに怜那は実年齢より若く、というか幼く見えるんだ。
ストレートの長い髪は黒いままだし、制服が私服になった以外ほとんど高校の時と変わってないしな。
身長はともかく、とにかく細いから余計なんだよなあ。
現実には、声には出さないけど腹の中で「いい年の男が女子高生と」とか思ってる人間もいるんだろうな、って遠い目になる。
「うーん、えっと。確かに、三月までは教え子だったんだけど」
「ちょっと!」
咎めるような美知の声。引っ掛かるのも無理ないから、別に腹も立たない。
こんなの聞かされたら誰だって引くだろ。少なくとも俺なら引く。
最初のコメントを投稿しよう!