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◇ ◇ ◇
「悪い、待たせた」
テーブル席で、おそらくはラテの小さなカップを前に座っていた怜那は、目の前に立つ俺たち二人を交互に見てる。
もともと対外的には無表情な彼女は口にも顔にも感情は出してないけど、なんとなく微妙な空気を感じた。
連れて来ちゃってマズかったか? いや、今更何言ったって遅いんだけど。
ああ、そういえば。さっき美知が迷った気がしたのはそのせいか。俺、無神経過ぎた……?
「……どうぞ」
怜那が向かいの席を指し示しながら座るように促した。
「沖くん、そっち側行って。あたしはここ座らせてもらう。でもその前に、飲み物買って来るわ」
「いや、俺が買いに──」
俺が言い掛けるのを、美知がぴしゃりと撥ねつける。
「あたしと二人でここに残されたって彼女が困るでしょ。何がいい?」
そりゃそうだ。そこまで考えてなかった。
正論に返す言葉もなく、俺は怜那に顔を向けた。
「それもう飲んだ? 次はいつものドリンクにする?」
「あ、うん。じゃあ、チョコレートの──」
机の上のカップを指して訊いた俺に、彼女が頷いて口を開いた。
「チョコレートのドリンクね。沖くんは?」
「ああ、コーヒー頼む。ホットで」
途中で怜那の言葉を奪うように、美知がてきぱきと仕切って来る。
こういうところも大学時代と変わってないらしいな。
「……なんかゴメンな」
彼女がカウンターに向かったあと。俺は恋人に改めて詫びた。
「あの人、沖さんの友達? っていうか元カノって奴?」
ごく普通の口調の怜那。こっちからは切り出しにくかったから、訊いてくれてかえって助かった。
この子は意外と勘がいいんだよな。
誤魔化しても無駄だろう。そんなことしたら不信感を強めるだけだ。
どうせバレバレなんだから。
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