7人が本棚に入れています
本棚に追加
「まあ、な。でも、ホントに元だから!」
「わかってるよ、だいじょーぶ」
笑ってくれた彼女にホッとする。
……あとで何とか埋め合わせしなきゃなぁ。どうするのがいいんだろう。
「お待たせ。はい、あなたの分。これでよかった? で、沖くんはコーヒーね」
「大丈夫です、ありがとうございました。あの、お代を」
飲み物を載せたトレイを持って戻って来た美知に、怜那が財布から出した代金を渡そうとしてる。
「これはあたしの奢り。デートのお邪魔しちゃったから、せめてものお詫びの印に」
「でも……」
掌を向けて断る美知に怜那が困惑しているのを見て、俺は慌てて二人の間に割り込んだ。
「いや、俺が払うから! えっと、これいくら──」
「沖くんの分は当然もらうわ。でも、彼女のはあたしが」
言い出したら聞かない美知を思い出して、俺は仕方なく自分のコーヒー代だけを渡す。
怜那と目を合わせると、彼女も何となく事情は飲みこんだらしくて、それ以上食い下がることはしなかった。
ホントにいい子なんだよなぁ。……ゴメン。
俺が怜那の右隣、その前に美知って配置で、とりあえず自己紹介することになった。
「挨拶が遅れちゃったわね。島野 美知です。沖くんと同じ大学だったの」
「あ、私は有坂、怜那です。沖さんの、その──」
さすがに言い淀んだ怜那に、美知は笑いながら手を振った。
「わかってる。さっき沖くんに聞いたから。氷溶けちゃうし冷めちゃうからいただきましょう」
美知の言葉を合図に、俺たちはそれぞれ飲み物に手を伸ばした。
最初のコメントを投稿しよう!