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彼は次の日もわたしの前に現れた。今度は瑞々しい果実を持って。
受け取りむしゃぶれば、たっぷりの水分を含んだ甘酸っぱさが口内に広がり、そして喉を滑り落ちた。
こんな子どもひとりを助けて、あなたに何の得があるのか。問いかけに、彼はこう答えた。
「僕なりの策略だよ」
と。
「天流族も地脈族も、大人たちはもはや戦のことしか頭に無く、話を聞く耳を持たない。だけど、子どもたちの心をつかめば、やがて君たちが長じた時に、考えかたが変わる、とね」
なるほど、わたしたち子どもを手懐けて、将来に賭けるわけか。しかし、ずいぶんと気の長い話だと笑うと、彼ももっともとばかりに肩をすくめた。
「天流族も地脈族も、かつてのヒトより長く生きられるんだ。時間をかけることによる不利など無いさ」
そう言って、彼はわたしの頭を撫でる。
「君が僕の理想を理解してくれる日を、楽しみにしているよ」
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