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それから、わたしたちは何度も会った。
そのたびに、彼が持ってきてくれる食べ物は変わった。
よく焼けた肉。もはや水など干上がっていなくなっていたと思われていた魚。昔、ハポンという国で作られていた、米を三角に握って海苔を巻いたもの。
料理をよく知っている。そう感心すると。
「ヒトの料理を後世に残すのも、僕たちの役割だと思うから」
相変わらず逆光で顔は見えないけれど、彼が楽しそうに笑うのがわかった。
その頃にはわたしは、すっかり彼に絆されていた。心をつかむには胃袋をつかめ、というらしいが、彼が持ってくる食べ物は本当においしかった。
なにより、戦を終わらせるために敵にも情けをかける彼の力になれたらという考えが、わたしの心の中に芽生えていたのだ。
だけど。
同時に、やきもちにも似た気持ちが、その下に潜んでいた。
彼は、わたし以外の子どもにも、こうして施しをしているのだろう。そう思うと、くすぶる煙がある。
わたしだけの彼でいてほしい。わたしだけに笑いかけてほしい。
「また来るよ」
くしゃり、と。
いつものようにわたしの頭を撫でて飛び去る背中を、わたしはひとつの決意を持って見据えていた。
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