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私は、ターミナルにいる。
青い背もたれのあるベンチに座り、目の前に広がる大きなガラス窓から外を眺めている。
あいにくと外の景色は真っ白だ。
霧で覆われているように何も見えない。
しかし、その殺風景な景色を見ても退屈にはならなかった。むしろ面白くてじっと見続けてしまう。
私を呼ぶ声はまだしない。
呼ばれたらここを去らなければならないと思うとどうにも寂しい気持ちになる。
もうここで自分のすべきことはないことは分かっているのに、いざ去るとなると戸惑ってしまう。未練がましく感じてしまう。
「幾つになっても大人にはなれないもんだ」
私は、1人愚痴り、背もたれに寄りかかる。
「耕助」
名前を呼ばれて私は振り返る。
そこに立っていたのは仕立ての良いスーツを着た40絡みの男だった。
「久しぶりだな」
男は、人懐っこい笑みを浮かべて右手を上げる。
私は、その姿を見て笑みを浮かべようとするもすぐに呆れた顔に変わる。
「なんか随分と若作りだな」
「お前が分かりやすいように初めて出会った時の姿できたんだよ」
そう言って私の隣に座る。
「初めて出会ったってそんなの覚えてねえよ」
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