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小山二葉
「大宮さん。今日一緒に食事でもしません?」
昼休み。
仕事が一段落つき、沙良がパソコンを閉じるのを見計らって、屋代くんは言った。
爽やかな雰囲気を醸し出しているけれど、やっぱりどこか馴れ馴れしいなぁ。
いつもの「仕事に追われてます」って感じの風貌はどこへやら。
心の中でそう呟くと、沙良がちらっとこっちを見た。
なんだか困る、というような顔をしている。
私はふっと笑みをこぼし、少しだけ口許を緩ませる。
いいじゃん、チャンスだよ。
視線で、そう伝える。
沙良は分かった、という意志の籠った眼差しを私に向け、屋代くんと向かい合った。
「あっ、いいですよ。ちょっと外出ます?」
「はい!」
屋代くん、凄く楽しそうだな。
はぁ。
知らぬ間に溢れ出た溜め息を悟られぬよう、ニヤニヤとした表情を作る。
キリ、と痛んだその胸の傷もすべて、いつか愛せるように。
私は沙良の幸せを願った。
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