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02《辰巳/フレ/ロイ》
ロイN:ブランケットを頭からかぶったまま、フレデリックは寝台の上へと放り投げられた。僅かに軋みをあげるスプリングに、顔を覗かせた途端に額を弾かれる。
フレ:「痛い!」
辰巳:「あぁん?」
フレ:「な、何でもないです…」
辰巳:「ったく、何が情夫だこのタコ」
フレ:「まさかキミに聞かれているとは…」
辰巳:「そういう話じゃねぇんだよ阿呆が」
フレ:「痛い痛い痛いッ! さすがに耳は痛いよ辰巳っ」
辰巳:「ああ? 人の事出し抜こうとしやがった報いだろぅが」
フレ:「それ以外に手が浮かばなかったんだから仕方がないだろう!?」
辰巳:「(盛大な溜息)」
フレM:――まさか手加減もされないとは思わなかった!
辰巳:「なにガンくれてやがる」
フレ:「別にっ」
フレッド、布団に潜り込む。
辰巳:「ったく、ひとりで勝手に突っ走ってんじゃねぇよ馬鹿」
フレ:「ごめんなさい……」
辰巳:「おら、こっち来い」
フレ:「辰巳…っ」
辰巳:「顔は出さなくっていいんだよ阿呆が」
フレ:「辰巳?」
辰巳:「悪ぃ、謝らなきゃならねぇのは俺の方だわ」
フレ:「え…?」
辰巳:「お前があぁでもしてなきゃ、どうにもできなかった」
辰巳、長い息を吐く。
フレ:「あんな手段しか選べなかった僕を軽蔑しない?」
辰巳:「しねぇよ」
フレ:「うん。そう、信じてた…。辰巳は…ひとりで逃げたりはしないんだろうなって……知ってたよ。あのままロイに抱かれてたとしても…、キミはちゃんと僕を愛してくれるって、キミが上書きしてくれるって、そう信じてたよ」
辰巳:「二度と、させねぇよ」
フレ:「うん…」
フレッド、顔を出す。
辰巳:「誰が顔出せっつったよ」
フレ:「ふふっ。子供みたいな顔をしてるよ?」
辰巳:「うるせぇよ。二度と俺だけ逃がそうなんてすんじゃねぇ」
フレ:「それは、どうかなぁ。キミが僕を守ってくれるように、僕だってキミを守りたいよ」
辰巳:「言ってろ阿呆が」
フレ:「キミが戻って来てくれて、嬉しかった…」
辰巳:「まぁ、次やったらほっぽり出すけどな」
フレ:「ええっ!?」
辰巳:「当たり前だろぅが。てめぇは誰とでも寝んのかあぁ?」
フレ:「いひゃいぉ…」
辰巳:「禁欲しろとは言わねぇよ。だからってお前、誰彼構わず抱かれてんじゃねぇ阿呆が」
フレ:「それは誤解だよ辰巳。だいたい僕を抱きたいなんて言うのはキミとロイくらいのもので……」
辰巳:「もうひとり、忘れてんだろ。あ?」
フレ:「もう、ひとりって…?」
辰巳:「すっとぼけてんじゃねぇぞ」
フレ:「ハーヴィー…も…」
辰巳:「(盛大な溜息)」
辰巳、フレデリックの頭を思いきり殴る。
フレ:「ッ――!!」
辰巳:「はッ、ンなこったろうと思ったぜ」
フレ:「だってキミと離れている間は仕方がないだろう!?」
辰巳:「抱くならまだしも抱かれてんじゃねぇって言ってんだ阿呆」
フレ:「……もしかして…嫉妬…?」
辰巳:「悪ぃか」
フレ:「はぅっ」
辰巳:「いい加減にしろよ変態」
フレ:「ああ…ッ、もっと僕に嫉妬してっ」
辰巳:「するかよ阿呆。今度やったらほっぽり出すっつったろぅが」
フレ:「嫌だ…っ」
辰巳:「(溜息)」
辰巳M:――とんでもねぇ馬鹿拾っちまったなこりゃ…。
フレ:「辰巳?」
辰巳:「あ?」
フレ:「迎えに、戻ってきてくれてありがとう」
辰巳:「当たり前だろぅが」
フレ:「うん」
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