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03《ロイ/ハー/フレ》
フレN:ハーヴィーはどこか寝慣れた、それでいてどこか違和感を感じる寝台の上で目を覚ました。良くも悪くもない寝心地は、いつも寝ている自身のベッドと変わらない。だが、息を吸い込んだ瞬間、拭いきれない違和感の正体に気付いた。
ハーM:――この香りは…!
ハーヴィー体を起こす。
ハーM:――フレッドと…あの男は…? 私は……。急に眩暈のような感覚に襲われて……、それから…?
ドアが開いてロイクが戻ってくる。
ロイ:「あぁハーヴィー、ようやくお目覚めかい?」
ハー:「ロイク…!」
ロイ:「少し躰が怠いかもしれないけれど、頭痛や吐き気はないね?」
ハー:「私に何をした」
ロイ:「君が興奮し過ぎているようだったから、少し大人しくしていてもらったんだよ。君が連れてきた日本人の彼とは、大事な話があったからね」
ハー:「フレッドは無事なんだろうな」
ロイ:「勿論だよ。僕がフレッドをどうにかするはずがないだろう? ところでハーヴィー、喉は乾いていないかい? 君は紅茶が好きだったよね」
ハー:「何のつもりだ」
ロイ:「何って、君に手荒な真似をしてしまったお詫びをしたいと思ってね」
ハー:「結構だ。私は自室に戻る。あなたの処遇はフレッドと話し合って決める。キャプテンを監禁するなどというだいそれた真似をして、無事でいられるとは思わない事だな」
ロイ:「そう簡単に、僕が君を手放すと思うかい?」
ハー:「離せ。これ以上問題を重ねるというのなら、私にも考えがある」
ロイ:「相変わらず威勢がいいね。だけどハーヴィー? 君は大切な事をひとつ忘れているよ」
ハー:「なんだ」
ロイ:「それは僕が、船を降りる前に君を自由にできるという事。そう、今目の前にいる君をどうしようと、僕の自由だという事実をね」
ハー:「それは脅し、んぅ…!」
ハーヴィー、ロイクに口をふさがれる。
ハー:「んんっ、……っぅ!」
ロイ:「ようやく自身の置かれた状況が理解できたようだね。君の正義感はとても素晴らしいけれど、この世には通用しない相手も存在するんだよ?」
ハー:「ンー……!」
ロイ:「あぁ、怯えているね。可哀相に…。苦しくて、恐ろしくて、堪らなく逃げ出したいと思っているだろう?」
ハー:「ゥゥ…」
ロイ:「顔が真っ赤だよ、ハーヴィー。この手を離して欲しいかい?」
ハーM:――私は……、このまま殺されるのか…?
ハーN:冷酷な男だとわかっていた。否、わかっているつもりだった。けれど、どこか自分は甘く見ていたのだと思い知る。
ハー:「……ッゥ」
ロイ:「僕のものになるというならその手で僕を抱き締めてごらん。死にたいのなら、そのままでいればいい」
ハーM:――死にたくない。…死ぬのは……怖い。
ハー:「ぅ……っ」
ロイ:「良い子だねハーヴィー。そのまま、素直にしていればいい」
ハー:「はあっ、は……どうして、こんな……。どうして…私なんだ……」
ロイ:「僕が君を気に入ったから。前にもそう言ったろう?」
ハー:「やめて…くれ…。頼むから…」
ロイ:「僕を選んだのは、他でもない君だよ。もう忘れたのかい?」
ハー:「ッ……」
ロイ:「それとも、本当は死にたかったのかな? もしそうなら殺してあげる」
ハー:「……っぁ」
ロイ:「泣いて縋りつくくらい、死ぬのは嫌?」
ハー:「……怖い…」
ロイ:「そう」
ハー:「(なんか震える感じで…)」
ロイ:「寒かったかな」
ハー:「ロイ…ク…」
ロイ:「なに?」
ハー:「私を…、その、あなたはどうしたいんだ」
ロイ:「どう、とは?」
ハー:「それは……」
ロイ:「君は僕のものになった。なら、どうしようと僕の気分次第だ。まあ、我儘を言いたいというなら聞いてあげなくもないけれど」
ハー:「……」
ロイ:「まずはテストといこうか」
ハー:「テスト…?」
ロイ:「君がちゃんと僕のいう事を聞ける子かどうか、躾をするには君のデータが必要だろう? さあ、そこに横になってみて?」
ハー:「何をするつもりだ……」
ロイ:「ただの確認だよ。すぐに襲ったりはしないから安心するといい」
ハー:「……信用できるとでも?」
ロイ:「信用しようとしまいと、僕には関係がない。君が言う事を聞けないというのなら、それまでの話だね」
ハー:「……わかった…」
ロイ:「目を逸らさないで。僕を見てごらん、ハーヴィー」
ハー:「っ…」
ロイ:「Good boy」
ハー:「…ッ」
ロイ:「誰が顔を背けていいと言ったのかな?」
ロイク、ハーヴィーの顎を掴む。
ハー:「ぃ…ゃ…。……嫌だ」
ロイ:「怖い思いをしたくないのなら、言いつけをちゃんと守るんだ。いいね?」
ハー:「っ……は…ぃ」
ロイ:「良い子だ」
ロイク、ハーヴィーの涙を吸い上げる。(水音ください!)
ハー:「…な」
ロイ:「うん?」
ハー:「なん…で、も、……ない」
ロイ:「おかしな子だね(笑い声)」
ハー:「その顔…」
ロイ:「顔?」
ハー:「その顔が良い…」
ロイ:「ふぅん…?」
ハー:「違っ、なんでも……っ」
ロイ:「少し、場所を変えようか」
ハー:「は? うわっ」
ロイク、ハーヴィーを体の上に乗せる。
ハー:「何を……っ」
ロイ:「降りるな」
ハー:「しかし…」
ロイ:「我儘は許すと言ったけれど、言い訳を許した覚えはないよ」
ハー:「どう…すれば…?」
ロイ:「君が怖がっているようだから場所を変えただけだよ。これなら少しは圧迫感も和らぐだろう?」
ハー:「それはそうだが…」
ロイ:「それとも、僕に見下ろされる方が好みかい?」
ロイク、再び体制を入れ替えようとする。
ハー:「こっ、このまま…! このままが良いッ」
ロイ:「じゃあ、君から甘えてみせて」
ハー:「甘え…?」
ロイ:「このままでいてあげる優しい僕に、お礼をしてみせて」
ハーM:――どういう理屈だ!?
フレN:と、思いはしても口に出すことが出来ないハーヴィーは、ようやくロイクの我儘に慣れつつあった。…気がしていた。
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