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家に帰ってまた眼球を眼窩から取り出した。
昔、前に眼球を外したあの時、耳も取ってしまおうとして、お父さんに必死で頼まれて、断念した。
見たくないものと聞きたくないことが多すぎて生きているのがつらかった。
眼球をはめたおかげで久しぶりにその感覚を取り戻した。
私は手の中に握りしめた眼球を握りつぶそうと思って手のひらに力を込めた。
眼球はひしゃげてたわみ、意外に硬い感触を私に伝えてくる。
決定的な破壊が起こる寸前に、お父さんの顔が頭に浮かんだ。
手の力を抜いた。
眼球を元通り布に包んでテーブルの端に置いた。
なぜお父さんはあんなに一生懸命に私を守ろうとするんだろう。
娘だからだと言われたことがあるけど、娘だったらなんだというのか。
今日お父さんが帰ってきたらそのあたりをもう一度よく聞いてみよう。
そう思ってパンを焼いて待っているのに全然お父さんが帰ってこない。
時計の声がもう夜遅い時間だと告げてくる。
それなのにお父さんが全然帰ってこないんだ。
終
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