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再会した奴は誰だっけ
八月の盆休み。多くの人間が帰省する。俺もその一人だ。
実家の最寄り駅に到着した。ここからは徒歩だ。バスは本数が全然ないし、タクシーだと高くつく。まあ、四十分の辛抱だ。
駅を出て、通りを歩く。向こうから一人の男が歩いて来る。ポロシャツにチノパンというシンプルな服装。周囲から察するに身長は俺と同じくらいで、年齢もそんなに変わらないだろう。丸顔に五分刈り頭で、どこか田舎臭い顔立ちをしている。
――どこかで見たことがあるぞ。
男の顔を見て、懐かしく感じた。
「よお、久しぶり」
男が目の前まで近づいてきた時に片手を軽く上げながら声をかけた。すると、
「久しぶりだな」
向こうも同じように声をかけてきた。
俺達はこのまますれ違い、歩き続ける。
――誰だっけ? あいつ。
懐かしい、久しぶりに会ったと思ったから、声をかけたのだが、誰なのか思い出せない。
もやもやしたまま実家に辿り着いた。
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