和睦

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 駅近くの通りを歩いていると、向こうから人影が近づいてきた。  ――いた! あいつだ。間違いない。  昨日見た顔と同じだ。 「よお」 「やあ」  互いに手を軽く上げ、声をかけた。 「お前、前世で今川義元配下の足軽だっただろ」 「そういうあんたこそ、織田信長のもとで足軽やってただろ」 「そうだ。桶狭間(おけはざま)の合戦の時に、俺達は互いに槍で喉を突き刺して、相討ちになった」 「ああ、その通りだ。もう一度やるか?」  純朴でやさしそうな顔をしているくせに、物騒なことを言う。  だが、殺気は感じられず、その表情はにこやかだ。 「やらないよ。今はそんな時代じゃないし、それに、俺達はもう武士じゃないだろ」 「そうだな」 「それよりも、駅前の寿司屋にいかないか? おごるぜ」 「いいねえ。喜んで行くよ」
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