36人が本棚に入れています
本棚に追加
俺の幼馴染は自覚がない。
自分がいかに周りから見られていて、特別な存在か分かっていない。
周りを牽制するために威嚇するのはもちろん、いかに注意を払い続けてきたか全く分かっていない。
杏は可愛い。
とにかく可愛い。
本当は誰の目にも触れさせたくはない。
常に彼女の右隣をキープし、冷静を装う事がどんなに大変か分かっていないのだ。
それに加えて杏の父親が曲者で、過去に一時期芸能界に居たか何だか知らないがやけに顔面偏差が高く無駄に足が長い。
今はカフェのマスターをしているが、オーラは相変わらず鬱陶しいくらい健在している。
その父親が事あるごとに言うのだ。
「晴也、お前が父親を超える医師になったら杏との事を考えてやるよ」と。
バカじゃないのか。
言いたくはないが、うちの親父はかなりの凄腕だ。本当は実家の病院を継ぐはずだったが勤め先の病院が離してくれず、今では担当科の外科部長までのし上がっている。
マジで、杏の父親には腹が立つ。
簡単に越えられるわけがない。
親父は日本一の医学部を出ている。
ならば、自分は日本ではダメだ。
世界で勝負するしかない。
頭は親譲りで良かったが、海外の大学への進学は死ぬほど勉強した。
それこそ、杏と会える時間を減らしてまで必死に勉強したのだ。
スタートで勝負しなければ、いつまでも超える事などできない。
俺は杏を誰かに取られるのだけは我慢ならない。
最速で勝負する。
そう決めて、海外留学という苦渋の決断をしたのだ。
明日、卒業式が終わり次第、俺は杏の父親と対決するつもりだ。
絶対に杏の隣は誰にも譲らない。
最初のコメントを投稿しよう!