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想いが天秤で量れたらいいのに。
そうすれば、私と彼とどちらの想いが深いのか分かるのに。
片思いの天秤。
最後に傾くのはどちらの秤か。
ずっと一緒だった。
それこそ、物心ついた時から晴也は側にいた。
幼稚園からずっと同じ学校で
常に一緒にいたから
何も言わなくても
何もしなくても
きっと
ずっと一緒だと思っていた。
だけど、そう思っていたのは私だけで晴也にはきっとただの幼馴染だったんだ。
明日、杏達は高校の卒業式を迎える。
幼馴染の晴也とはいつも通り一緒に登校するだろう。
だけど、ずっと側にいた晴也は明日を最後に遠い場所に行ってしまう。
杏は晴也も同じ大学だと信じて疑わなかった。
でも、いつの間にか彼は自分の道を決めていて遠い場所へ離れて行ってしまう。
ずっと好きだった。
それこそ、幼い時から。
晴也が普通の自分とは違い、次第に周りから注目されるようになっても2人の関係も距離も変わらなかった。
だから、晴也も同じ気持ちだと思っていたのに。
自惚れてたのかな。
いつもは無愛想な顔も杏には笑いかけてくれる。
いつも杏が悩んでいる時は誰よりも気づいて助けてくれる。
いつも右隣に居てくれる晴也の存在は大きな安心感となって杏を包んでくれた。
だから
安心しきってしまったのだ。
けれど、その関係も明日で終わる。
杏は、ぽっかりと穴が空いた右隣の空間をどんな風に埋めればいいか分からずに部屋で途方にくれる。
いつしか、溢れる涙が頬を伝っていた。
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