1話 始まり。

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[1906年4月(帝記二〇〇七年)大東皇帝国] 一人の少年がピカピカの軍服を来て校庭に立っていた。 壇上には軍刀を下げ、立派な髭を蓄えた軍人が立つ。 ここは、大東皇帝国が運営する士官学校である。 少年は期待を抱かせながら、軍人の行う訓示を聞いていた。 まだ、14歳で入校した彼にとってはこれからの4年間は地獄の様な生活が待っていることは想像が出来なかったであろう。 帝国内では軍人が最高の名誉ある職業として持て囃され、特に将校ともなればまず困る事はなかったからである。 (…これで俺も帝国軍人か) そう思いながら、訓示を聞き流す。 少年は目線だけを動かし、喜びのあまり薄ら笑いをする。 やがて、訓示が終わると少年達は部屋に案内され持ってきた荷物を置く。 8畳ほどの部屋に二段ベッドがギリギリまで置かれ通路は人が一人通れるかどうか程である。 荷物を置くと直に第一教室へ集合がかかった。 集合場所に集まると、少年達の前には区隊長と呼ばれる軍人が立っていた。 敬礼の号令がかかり、敬礼をし、直れがかかる。 「今日から貴様等が属する、第三区隊区隊長である甲斐中尉である、入校式が終わったからと気を抜くな、貴様らはこれから何百、何千とも言える人の命を預かるのだ、肝に銘じて置け。」 その言葉に少年は背筋を伸ばす。 少年はこうして軍人の卵になった。
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