3話 新天地。

13/15
前へ
/48ページ
次へ
「…これは、独特ですね…」 アンはそう答えた。 目の前にあるのはどう考えても人のような豚のような絵であった。 その様子を見てアリアは頭を押さえた。 「…知ってるわ。下手な事くらい。」 2人の間には少しの沈黙が訪れる。 「お嬢様…どうして急に絵なのですか?」  「履修学科の中に絵画があるの。この画力じゃ貴族院の晒し者になるわ…だからもし、アンが得意なら練習に付き合ってほしかったのよ。」 アリアは小さく溜め息をついた。 (ただでさえ、彼女がいるから…) アリアが危惧していたのは何かと嫌味を言うレーナの事だった。 幼少期の頃からお家柄の為に親交はあり、腐れ縁でもあったもののアリアはレーナを嫌っていた。 レーナは高飛車な所が強く、爵位もウィンドル家よりも上で常にアリアを小馬鹿にしている為、鼻に付いていた。 彼女に言われるであろう言葉がアリアの脳裏をよぎる。 「…本当にムカツクわ。」 そう言うと紙を丸め、ゴミ箱に捨てる。 (猿を連れているだけでも嫌なのに…) 志波の顔とレーナの笑う顔が浮かびさらに憂鬱になる。 アンはアリアのフォローに徹する。 「まだ、始まったばかりですしこれからですから。」 アンは優しく伝えた。 少し黙り、深く深呼吸をする。 「…そうね。」 冷静に答える。 こうしてアリアの入学初日は終わっていった。
/48ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加