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「…これは、独特ですね…」
アンはそう答えた。
目の前にあるのはどう考えても人のような豚のような絵であった。
その様子を見てアリアは頭を押さえた。
「…知ってるわ。下手な事くらい。」
2人の間には少しの沈黙が訪れる。
「お嬢様…どうして急に絵なのですか?」
「履修学科の中に絵画があるの。この画力じゃ貴族院の晒し者になるわ…だからもし、アンが得意なら練習に付き合ってほしかったのよ。」
アリアは小さく溜め息をついた。
(ただでさえ、彼女がいるから…)
アリアが危惧していたのは何かと嫌味を言うレーナの事だった。
幼少期の頃からお家柄の為に親交はあり、腐れ縁でもあったもののアリアはレーナを嫌っていた。
レーナは高飛車な所が強く、爵位もウィンドル家よりも上で常にアリアを小馬鹿にしている為、鼻に付いていた。
彼女に言われるであろう言葉がアリアの脳裏をよぎる。
「…本当にムカツクわ。」
そう言うと紙を丸め、ゴミ箱に捨てる。
(猿を連れているだけでも嫌なのに…)
志波の顔とレーナの笑う顔が浮かびさらに憂鬱になる。
アンはアリアのフォローに徹する。
「まだ、始まったばかりですしこれからですから。」
アンは優しく伝えた。
少し黙り、深く深呼吸をする。
「…そうね。」
冷静に答える。
こうしてアリアの入学初日は終わっていった。
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