1話 始まり。

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[1910年3月 大東皇帝国] 卒業式が始まる。 式はそのまま順当に行われていき、平和な時間が過ぎていった。 「…以上、私からの訓示とする。これから贈刀式に移る。」 士官学校校長からの訓示が終わり、メインイベントである贈刀式になる。 卒業賞状の代わりに軍刀が生徒たちに送られ、卒業した軍人のステータスになるものであった。 一人、一人名前が呼ばれ登壇し、軍刀と階級章が渡される。 「七瀬候補生」 「はい!」 七瀬は名前を呼ばれ勢いよく返事をし、立ち上がる。 登壇し、敬礼を行うと、校長である吉田少将から軍刀と、階級章が手渡される。 「ありがとうございます!」 そう、返答し降壇すると自分の席に戻る。 七瀬はその手渡された軍刀を握りしめ、ジッと見つめていた。 (ついに…卒業したのか) 微かに握る手が震えていた。 式も後半になり、あっという間に終わる。 皆、部屋に戻り纏めた荷物を持ち、配属部隊の迎えを待った。 そして、同期の提案により、軍歌を歌い皆で肩を組んで別れを惜しんだのであった。 七瀬の部隊である第一歩兵連隊の迎えが来ると同期達と握手をし、八七式トラックに乗り込む。 自動車が走り出すと、中岡が走って追いかけた。 「七瀬!また何処かで会おうな!」 そう言って中岡は小さくなるトラックに敬礼をした。
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